設計と構築
3-25
プロセスのシンプル化
- 状況
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申請業務などをkintoneで構築する際に、運用プロセスの一部が基本機能のプロセス管理で実現できないとわかった。そこで使い慣れた運用にあわせるため、連携サービスやカスタマイズ開発の検討をはじめた。
例えば、現在の紙の運用では、申請者が申請済の紙を「取り戻し」したり、承認者が長期不在の場合には「代理人による承認」をしたりしているが、基本機能のプロセス管理では「取り戻し」や「代理人による承認」ができない。
- 問題
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現在の申請プロセスや運用方法そのままをkintoneで再現するだけでは、業務改善の効果は少ない。
業務の変化に伴って申請プロセスや最適な運用方法も変化するが、ここを見直すことなくkintoneで同業務を再現しても、現場メンバーにとっては使い慣れた方法を奪われただけで、プロセスの効率化なしにただ混乱するだけであることが多い。また、たとえ複雑な経路設定を基本機能のプロセス管理で設定できたとしても、その管理は煩雑になり、設定や変更でミスが起きやすい。
- 解決
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現行のプロセスをkintone化する際は、そのプロセスの流れを効率化・簡略化できないか検討した上でプロセスを再設計する。
プロセス設計の見直しの際は、【業務の付加価値】(1-05)を明確にして、その業務の目的や付加価値に立ち返ったり、【図に描く】(3-23)でプロセスの全体像を把握したりすることで、プロセスの不要な部分を見つけられる。
今回の状況のように、紙からクラウドの運用に変わることで、プロセスの見直しができることもある。たとえば「代理人による承認」は承認者が会社にいない場合に申請が滞ってしまう為に設けていたのであれば、kintoneに変更することで社外からでも承認が行えるので、見直しの対象としてもよいかもしれない。
またプロセス管理の設定の際は、設定画面自体が複雑にならないように留意してほしい。
たとえばプロセス管理の設定画面で、扱うすべての経路について条件分岐を使って個別に設定すると、設定するプロセスの数は多くなる。この場合は、フォームに必要な作業者フィールドを用意し、プロセス管理の設定画面では作業者フィールドを指定して、最小限のプロセスを設定するのが望ましい。あわせて、扱う経路を別アプリ(経路マスタ)に用意し、経路マスタから作業者をルックアップすれば利便性があがる。さらに【基本機能から考える】(2-14)パターンを踏まえて、基本機能のプロセス管理に、申請プロセスや運用方法を合わせてみる試みもよい。
基本機能のプロセス管理は、文字通り「作業プロセスを管理する機能」であり、ボールを持つユーザー(=ステータスの作業者)のみが次のユーザーへパスを回せる(=プロセスを回せる)、言い換えると「パス回し」をする機能だ。つまり、ボールを持っていない状態では、ユーザーはパスを回すことはできない。
そのため「取り戻し」や「代理承認」を再現できないが、kintoneの他の機能も活用して「パス回し」に申請プロセスや運用方法を合わせるアイデアもある。たとえば申請を取り戻したい場合は、レコードのコメント欄で現在の作業者に対して「プロセスを戻してほしい」とコメントをする運用も考えられる。
- 結果
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申請プロセスがシンプルになり、現場メンバーにとって使いやすい仕組みが構築できる。
ただクラウド化するためだけのkintone導入ではなく、実際に業務の効率化や短縮が期待できるようになる。【プロセスのシンプル化】(3-25)をする際に設定もシンプルにすることで、アプリの運用開始後に業務フローや申請プロセスが変更になった場合も、設定変更でミスが起きづらくなる。連携サービスやカスタマイズ開発はkintoneの可能性を拡げるもので、有効に使うことができればさらなる業務の効率化が図れる(参照:【kintoneエコシステム】(0-04) )。必要性を検討した上で効果が見込める場合は、進んで導入するのがよい。
なお、kintoneをワークフローとして利用する場合には、次のパターン実践ガイドを参考に設計・構築を進めてほしい。
▼ワークフローとして利用する場合の設計(パターン実践ガイド)
https://kintone.cybozu.co.jp/kintone-signpost/guide/workflow.html
パターン実践ガイド
このパターンを活用・実践する際には、次のパターン実践ガイドの情報を参照してください。