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平均年齢63歳
5人の会社だから目指した
「会社のデジタル化」

株式会社 広浦
株式会社 広浦営業部
私たちは9年前、石屋からITの会社へと事業転換した平均年齢63歳の会社。主に地酒造りの酒蔵さん向けに、スマホで見える温度計を開発、組み合わせ、販売しています。
私たちの提供する製品kojimoriは、温度計と、データをインターネットに送るセンサゲートウェイの組み合わせで構成されています。この製品を全国のお客様に郵送し、電話でサポートします。
対象ユーザーは杜氏さん。手作り大吟醸の、2日2晩見守らなければいけない麹造りの労力を軽減するツールです。
ユーザーサポートは当社の一番大切な仕事。「酒造りの腕には自信があるけれど、言葉もわからないITは、どちらかというと苦手」という杜氏さんがお客様ですので、私たちは自分達自身の経験から、その気持ちを汲んだITサポート(寄り添えるサポート)ができるようにと注力しています。

「現場の匠に役立つITツールを提供する」
キントーンはそんな私たちのミッションを支えてくれています。

kintone 導入背景

キントーン導入のきっかけは、「かんばんシート」の手書きの多さを削減したいということからでした。
機器構成や設定情報はエクセル、出荷までの必要な情報は紙の「かんばんシート」で管理していました。紙にしたのは、「エクセルの操作になれていない経理社員の参加が必要」だったからです。ただこの方式は欠点があります。お客様からの、使い方やトラブルの電話対応において、納品した製品がどんな組み合わせでどんな設定だったか、資料をすぐに集められないのです。すぐに答えられない。また、手書きのかんばんは転記が多い。これらがストレスだったのです。

事務所ひとつ、たった5人の会社でファイルサーバーもあり、販売管理パッケージソフトも使っていて、業務的にはキントーンはいらないと思っていました。ところが従来の販売管理パッケージは売掛管理用。必要な情報を記入しきれません。
こんな背景から2年前、Webで使えるキントーンを利用することになりました。

kintone 利用対象となる業務

キントーンを導入した業務は、主に以下の3つです。
1.製品組み合わせ出荷業務
2.お客様サポート業務
3.次世代への業務引き継ぎ

1の「製品組み合わせ出荷業務」は、「かんばんシート」と呼ばれる紙のチェックリストを使って「見える化」していました。案件ごとに、受注後出荷までのプロセスの進捗を1枚の紙で表示するものです。もれを防ぐための情報共有が目的です。
・受注したセンサーや機器の組み合わせ
・必要な特注部品の発注
・入金確認と送り先住所
・製品の出荷状況
を、それぞれの部門担当が書き込みます。製品を出荷するまでボードに貼って、皆が見えるようにしています。

2の「お客様サポート業務」は、記帳するものが別々でした。
・受注前の問い合わせを紙に書き込む「電話受付一覧」
・受注後に出荷した製品のバージョンや設定をエクセルに書き込む「お客様設定一覧」

3の「次世代への業務引き継ぎ」は、次世代のために仕事の流れを整理してゆく試みです。

該当するアプリやスペース名

コンセプトと企画・開発の意義

【目指すは「ストレスのない情報表示」】
まずはきっかけとなった「かんばんシートのキントーン移行」は、以下のことが課題でした。
1.転記なし
2.詳細情報、関連記録、過去の履歴へかんたんにたどれる
3.共有できる
4.移行への心理的抵抗が少なく、移行後のメリットを実感できる

特に「かんばんシート」は情報の交差点、各業務担当の情報をひとつに表示したものです。エクセルに慣れていない人も、業務をまたいで記入、閲覧ができることが必要でした。Webで入力するフォームは身近で、かつ自分の記入する項目がはっきりしている。心理的な壁を低くするものだったようです。
「かんばんシート」に受注した製品を表示するためには、組み合わせる製品を参照する「製品DB」が必要でした。さらにそれぞれの製品を構成する「部品DB」、それを買い入れる「メーカー・仕入先DB」、文書や資料のやりとりを保管する「仕入先からの受け取り書類DB」へと、参照をたどっていけるようになりました。

【会社の活動をWeb上に投影すること】
 取組を始めてみると、「ストレスのない情報表示」は、中高年の私たちが唯一できること、つまり「お客様第一を具体的に実現しよう」という思いから出てきたものだと気が付きました。そしてもうひとつ気が付いたこと、それはこの取り組みが
「会社の活動をWeb上に投影すること」
だということでした。かっこよく言うと、「会社のデジタル化」です。

これらに資料の保管場所や業務の手順をDB化して加えると、新しい人が入ってきたとしても自分のやることが明確なので、存分に才能を発揮してもらえるのではないかと考えました。「次世代への業務引き継ぎ準備」ということです。お客様のためにも実現しなければいけない。人材確保は中小企業にとって大きな課題でした。

「会社のデジタル化」
これは結果として出てきたコンセプト、開発の意義です。キントーンを「会社のデジタル化」プラットフォームと考えています。

【次世代への業務引き継ぎ準備】
「なにも会社のデジタル化をしなくても、マンツーマンで引き継ぎはできるじゃないか」とも言えます。多くの中小企業がそうしています。しかし次世代とは、日本の若者のことだけを指すとは限りません。異文化の留学生かもしれません。さらにはAIかもしれません。

私たちが石屋からIT企業へと業態を変えることができたのも、実はソフトウェア開発を優秀なハンガリー企業に分担してもらっているからなのです。ハードウェアは台湾企業から。企画と品質チェック、お客様サポートは日本の私たち。年齢も年齢だし、異業種から参入した自分たちのできることが限られていたので、このようなコラボレーションになりました。
ということで事業継承に「世代間のギャップ」だけではなく、「異文化のギャップ」や「AIという異次元のギャップ」も埋めることを考えたとき、「会社のデジタル化」は意味があると感じています。

【公式文書が書けない】
もうひとつ、私たちにとっての課題があります。それはお客様に配るマーケティング資料をはじめとする、対外的な公式文書がうまく書けないというものです。文という形にできないのです。長々と言うことは言えるのですが情けない。
展示会で経験したのですが、「要するに何?」「他と比べて違いを一言で言うと?」という鋭い質問を受けた時、タジタジになってしまいます。自分たちが何者かわからず、ただ機能を並べてしまうのです。
こればかりは広告代理店でも、ホームページ作成業者でも、しっくりしたものは作れません。自分たちで見つけて、形にするしかないようです。
これは中小企業に多い「下請けDNA」が影響しているのかもしれません。

お客様から言われたこと、気が付いたことを小さな文のまとまりにして、文のモジュールのようなものを書き溜めることから始めようと考えています。
「形にする力」
「具体的に深く考える力」
これらを何とか育てる仕組みを、社風にビルドインしたいと思っています。キントーンを役に立てないか、課題です。

創意工夫や想い

【たどるスタートはお客様DBから】
手始めに「かんばんシート」をキントーンに表示したい。フォームを作り、2度ほどサイボウズのサポートの方に見てもらいました。そのやりとりの中でわかったのですが、「ルックアップ」と「関連レコード一覧」は、非常に役に立つ機能でした。特に「関連レコード一覧」は重宝しました。

「かんばんシート」をキントーンでDB化した「売った製品・かんばんDB」は、お客様に納品した製品の詳細も記録されています。お客様の名前や住所は「お客様DB」からルックアップ機能で参照して表示しています。同時に「お客様DB」の中では関連レコード一覧機能を使って、お客様に納品した製品の組み合わせへとたどれるようにしています。
同じように「お問い合わせ・訪問DB」「客先提出書類DB」に記録したお客様とのやり取りのみならず、「見積もりのシュミレーションDB」へも「お客様DB」から関連レコード一覧でたどれるようにしています。
このように、すべてのやり取りは「お客様DB」を開けば、ここからたどっていけるのです。

【手作りの「会社のデジタル化」プラットフォーム】
私たちは平均年齢63歳をよしとはしていません。中高年になると「忘れる」「思い込む」「常識が先に出て、前提の違いも深く考えなくなる」「文書作成に完璧を求めるか、手を付けなくなる」「いろいろめんどくさい」やはり思い当たることばかりです。
私たちはお客様に恵まれました。星の数ほどある業者の中から、しろうと同然でスタートした私たちを選んでくれました。「重宝しているよ」と声をかけてくれる杜氏さんの言葉は、なによりも励みになります。

お客様のためにも、しっかりサポートしてゆかなければなりません。優秀な方たちに引き継いでもらいたい。しかし、自分たちが何者かを見つけるのと同じように、引き継ぐ流れは自分たちで作っていくしかありません。
キントーンは手作りの「会社のデジタル化」に付き合ってくれる、柔軟性あるやさしいプラットフォームだと思います。

資料