株式会社ヤマウチ

「つらく、楽しくない、
そんな水産業のイメージを変えたい」
ひとつにまとまった情報で自立と協力が生まれ、
チームワークあふれる仕事場へ!

  • チーム名:株式会社ヤマウチ
  • 業  種:ECおよび実店舗における海産物の販売、水産加工品の製造・販売など
  • 導入規模:50名
人物 人物 人物 人物 人物

すべてを失った東日本大震災から
驚異の再建
南三陸町の鮮魚店が
その過程でkintoneをフル活用

専務取締役 山内恭輔様 専務取締役 山内恭輔様

株式会社ヤマウチは、宮城県南三陸町で採れる新鮮な魚介類の販売、および水産加工品の製造・販売を行う企業です。1949年に鮮魚店としてスタートし、現在「南三陸さんさん商店街」の実店舗のほか、2つの水産加工工場を構えています。

また同社は、全国的にも多くの顧客を獲得しています。1990年初頭から通信販売を始め、その後2005年に立ち上げたECサイトの運営に力を注いできたからです。延べ10万人以上に利用されている同社のECサイトは、2013年に第10回オンラインショップマスターズクラブ最優秀実践者賞を受賞するなど、業界の枠を超えて高く評価されています。

しかも、そうした今日の同社の姿は、あの2011年3月11日の大津波によって、工場を含む社屋のすべてを失いながらも、そこから立ち上がり、再度築き上げたものなのです。

情報がバラバラ、
スタッフの気持ちもバラバラで、
いわれた業務をこなすだけ……
再建に立ちはだかる「楽しくない仕事」
「意見をいいづらい社風」という難問

3.11によって、南三陸町は市街地の約8割が浸水し、人口も町外流出を含めて大幅に減少。専務取締役の山内恭輔氏は、そこからの再出発を決意しました。圧倒的に人手が足りず、業務の効率化は必須だが、そのためになにをすればいいのか。人材確保のため、「つらく、楽しくない仕事」という水産業に対するイメージをどうすればぬぐい去れるのか。トップダウンですべてのものごとが進み、スタッフはただいわれたことをするだけ、「こうしたい」という意見をいいづらく、アイデアを出そうという意欲すら持てない、そういう社内の風土をどう変えればいいのか……。

社内で長年くすぶり続けていたそれらの問題が、震災によって表面化し、会社再建にあたって乗り越えなければならない壁として山内氏の前に立ちはだかりました。中でも、情報の管理や共有に関する課題は、明らかに改善を要する点として、震災前からずっと山内氏を悩ませていたといいます。

社内には情報共有という意識がほとんどありませんでした。ECサイトのお客様データは社内サーバーひとつで管理し、取引先とのやり取りや見積りといった案件情報は、スタッフ個人のPCや、FAXなどの紙の形でバラバラに存在していました。

当然、そこがネックになって、いろいろな問題が起きていました。たとえば、取引先から『以前もらったのと同じ見積りをまた出して』といわれても、それが誰のPCに入っているかさえ、すぐにはわからない。『今日は100ケース注文したいけど大丈夫?』という急な電話があっても、在庫を調べなければならず即答できない。これはさすがにまずい、クラウドを導入しようか、と考えていた矢先、震災が起きて、約11万人分のお客様データを失ってしまったのです」(山内氏)

熟考の末、山内氏はひとつの結論に達しました。それは、これまでのように経営陣や上司の指示がなくても、あるいはことあるごとに伺いを立てなくても、スタッフ一人ひとりが意思決定し、個人またはチームで業務を進められる社内環境を整えることでした。そうなれば、スタッフは仕事を“自分ごと”ととらえ、やりがいや楽しさを感じるようになるはずだ、と。

それを実現するために必要なものとは? スタッフが自ら考える上で判断材料となるデータベースがあればいい。これまでバラバラだった社内の情報をひとつにまとめれば、それをスタッフが好きなときに活用して意思決定し、トップダウンではなく個人やチームで業務を進められるようになるのではないか。山内氏はそう考えました。

山内氏は長い時間をかけ、さまざまなシステムの導入を検討しました。しかし、見積りはどれも想定を超える金額。しかも、使っているうちに手直しが必要になれば、また費用と時間がかかってしまう。どうすべきかを悩んでいたまさにそのとき、kintoneに出会いました。

「IT関連企業の知り合いが、kintoneを使ってみせてくれたんです。目の前でアプリができ上がっていくのを見て、『これだ!』と。特に感銘を受けたのが、誰でも簡単にアプリを作れるところ。『各スタッフが自ら意思決定して業務を進める』という私の目指すところにぴったりだと感じて、その場で導入を決意しました」(山内氏)

「専務が余計なことを……」
そんな冷めた反応が、効果実感で一変!
情報の伝達・共有漏れゼロ、
チーム内での分担・協力もスムーズに

デザイン室 デザイナー兼 商品開発部 後藤亜紀様 デザイン室 デザイナー兼 商品開発部
 後藤亜紀様

とはいえ、山内氏のそんな情熱や感動が、スタッフにすぐに伝わったわけではありません。kintoneの導入を発表したときの社内の反応は、「専務がなにか余計なことを始めたな」という冷めたものだったそうです。

そこで山内氏は、まずは利用を定着させることが先決と考え、スタッフに対し、とにかくデータを入力してほしいと、粘り強く伝え続けました。そして自身は、案件管理アプリをはじめ、ひたすらアプリを作り、その数を増やしていきました。

すると、kintoneに向けられるスタッフの目が次第に変わっていったのです。チームでデータを共有する効果を実感し始めたからだ、とデザイン室デザイナー兼商品開発部の後藤亜紀氏はいいます。

課題とkintoneによる効果の説明図

以前は、スタッフ間の情報の伝達やスケジュールの共有に課題があったのですが、kintoneによって抜け漏れがまったくなくなり、他部署との伝達・共有も楽になりました。たとえば、旬の魚介類は季節によって違うので、毎年この時期になったらこの魚の準備を始める、という細かなスケジュールがあります。ところがこれまで、魚介類ごとに旬の時期を把握しているスタッフがバラバラで、年間を通じて管理している人がいませんでした。そのため、誰かが『そろそろホヤの時期じゃない?』と思いついていい出さないと、準備が遅れてしまったりする。kintoneでカレンダーを作り、毎年同じスケジュールでスタッフに通知がいくように設定したことで、そういう問題は一切なくなりました。それどころか、『私はこの魚を準備するから、あなたはその魚を』といったチーム内での分担・協力もスムーズにできるようになりました」(後藤亜紀氏)

また、kintoneで売上実績をグラフ化し、誰でも見られるようにしたことが、モチベーションのアップにつながっている、と後藤亜紀氏は続けます。

「かつては、なにがどれだけ売れたかがわからない、つまり自分たちの手がけた企画・営業・販売の成果が見えなかったので、疲れるばかりで心が折れてしまうときがありました。グラフを見て、去年より上がった、この商品はよく売れた、というのがわかると、やっぱり嬉しくなって、やる気が出る。そういう部分でもkintoneの効果を実感しました」(後藤亜紀氏)

「私たちだけでできるので、
専務はいなくていいです」
専務の机のないオフィス、
鳴らない電話こそが改革の象徴

通販事業部 後藤妙美様 通販事業部 後藤妙美様

kintoneが可能にしたことはまだまだあります。案件管理アプリを使えば、たとえ営業担当が変わっても、あるいはいちいちExcelやメールを開かなくても、1つのページで過去のやり取りを時系列で追うことができます。製造・出荷に関しても、工場のスタッフへの指示書やマニュアルをすべてkintoneで作り、それをiPadで閲覧する形に変えたことで、紙を使った面倒な指示ややり取りが不要になり、スタッフが現場で自ら判断して業務を進められるようになりました

その効果は、当初の目標のひとつだった業務の効率化だけに留まりません。多くの業務において、本来担当でないスタッフや新しく入社したスタッフでも、kintoneでまとまった情報を活用することで、各業務の熟練者に近いレベルでの対応が可能になったのです。通販事業部の後藤妙美氏はいいます。

「たとえば、お客様からお問い合わせのメールをいただいたとき、以前ならそのつど、どのように返信すべきか悩んだり、専務に電話をかけて判断を仰いだりしなければなりませんでした。現在は、過去に送ったさまざまな返信の好例がkintoneに蓄積されているので、それを参考にしてすぐに返信でき、お客様をお待たせすることがなくなりました。お客様にお送りするお礼状や、商品に同梱するレシピについても同様のことを行っていて、喜んでいただけるケースが確実に増えています。そういうホスピタリティの向上と均一化は、他のECサイトとの差別化において非常に大切だと感じています。
入社時、私の仕事は、ただ注文を受けることだけでした。でも、今は違います。たとえば、以前ならデザイナーの後藤亜紀さんにしかできなかったことが、kintoneによって、私を含め、別のチームや部署のスタッフにもできるようになっている。導入以前と比べ、そういうことが断然増えているんです」(後藤妙美氏)

後藤妙美氏らスタッフが自主的に集まり、顧客に送るレシピを和気あいあいと考える。そういう光景を目にするたび、山内氏は、社内の雰囲気やスタッフの意識の大きな変化を実感するといいます。

「皆、本当に楽しそうだし、積極的なんですよ。当初は私しかkintoneを使っていませんでしたが、今はすべてスタッフに任せてしまったので、私の知らないアプリがたくさんある。全商品一覧アプリも、後藤亜紀が『自分の会社の商品なのに、全部把握できていないことがずっと気になっていた』という理由で自分で作ったんです。昔は、皆がそういうモヤモヤを抱えながら、改善することも、いい出すことすらもできずにいた。困ったら私の携帯に電話して尋ねるしかなかったんです。それが、チームでどんどん意見を出し合い、スタッフ同士で協力して、楽しみながら業務を進められるようになった。今はもう、私への電話はほとんどかかってきません。実はオフィスには私の机すらなくて、『私たちだけでできるので、専務はいなくていいです』といわれています(笑)」(山内氏)

もちろん、業務の効率化という点でも、kintoneは大きな効果を生んでいます。お歳暮で繁忙期となる12月でさえ、残業はほぼゼロ。さらに、完全週休2日制についても、工場を含めて達成しています。これは、「水産業では難しいと思っていた」と山内氏が半ば諦め、それが本当に実現した際にも「休みをどう使えばいいかわからないんですが」と工場長が戸惑ったほど、業界では異例の成果です。

バラバラだった情報をひとつにまとめ、スタッフがそれを活用することで、仕事が“自分ごと”となり、積極性とやりがいが生まれる。さらに、チーム内の連携が活性化し、チームや部署の垣根を越えていく。まさに山内氏の目指した通りの環境が実現されました。そして同社は、「10年後、昔のように楽しく、幸せに暮らせる町を取り戻す」という、さらに大きな目標に向け、今も前進し続けているのです。

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