イノベーションの本質
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科
楠木 建 教授
最初に登壇した一橋大学大学院 国際企業戦略研究科の楠木建教授は、「イノベーションの本質」と題して、自身の研究テーマであるイノベーション論について展開した。kintone自体がイノベーションであり、イノベーティブな使い方をユーザーにもたらしていると語りながら、「では、一体何がイノベーションなのか」と会場に質問を投げかけ、様々な例を紹介しながら「イノベーションを進歩と勘違いしているのではないか」と提起する。イノベーションは、単に「変化」「新しいこと」ではなく、ドラッカーの言葉を借りれば「社会を変える」こと。大衆に受け入れられるために商業化されていることが重要で、経済的な視点からは「非連続性がイノベーション足らしめているもの」であり、「パフォーマンスの次元が変わること」がイノベーションの本質だと説く。
ここで、フィルムとは違い簡単に消去できることで日常の記録に使うという新たな価値をカメラに与えたカシオのEXILIMや19世紀に刈り取り機を発明したハイラムムーアが起こした「分割払い」の考え方などを紹介した上で、イノベーションが成功すると新たなカテゴリを生み出すことに繋がると説明。
また、数字などで推し量れないイノベーションを嫌う経営層や株主の特性を紹介し、「価値の次元が見えすぎると、進歩にしか向かわない」という“可視性の罠”についても解説した。最後に、インセンティブである誘因ではなく、内発的な動機となる動因がイノベーションには不可欠だと締めくくった。